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ゲームできない憂がテイルズシリーズについてを語る専用のブログです。 プロフィールのとこに拍手ありますので何かあればそちらに^^
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『これだけはどうしても』
「ユーリ、ハッピーバレンタインです!」
「おー、サンキュ」
笑顔で差し出されたのは、水色の箱。
ああ、今日はバレンタインなんだと遅れながらに考えた。
「味は保障しますよ、ジュディス直伝ですから」
心配だなんて一言も言っていないのに、と苦笑を漏らすとエステルは何か勘違いしたのか頬をぷくっと膨らませた。
「もう、ユーリ!信じてないですね?」
「信じてるって。それより、その手に持ってる箱は?」
先程から気になっているオレンジ色の箱と緑色の箱。よく見ると、ユーリが貰った水色の箱と色違いのようだ。
「これですか?カロルとレイヴンの分です」
ラピードにあげられないのが残念です、としょんぼり肩を落とす。
「…ああ、そっか」
「カロルとレイヴン、喜んでくれるでしょうか?」
「大丈夫だろ」
手中の箱を見つめながら問いかけるエステルに、ユーリは少し胸が痛みながらも短く返した。
俺は思春期のガキか。
たかがチョコレートだろう。カロルやレイヴンに同じものを渡したってどうってことはない。
と、いうことはどうやらないようで
考えれば考えるほど、ムカムカし不機嫌になる。
そんな自分に観念したかのように溜め息をつき、彼女の名前を呼んだ。
「エステル」
はい?とかわいらしく返事をし振り返った彼女の腕を引っ張り、赤く小さい唇に自分のそれを重ねた。
「………っ!」
そっと唇を離すと、エステルは驚いて目を見開いていた。
その顔が何だかおかしくて、思わず噴き出す。
「…変な顔だな」
「えっ、だだだって、ユーリ……今っ!」
頬をりんごのように真っ赤に染めて慌てふためくエステル。
そんな彼女の耳元に顔を近づけ、彼女にだけ聞こえる声で囁いた。
「…他の奴と同じなんて、まっぴらごめんだからな」
自分の耳元から、かわいらしい小さな声で「ユーリの、ばか」と聞こえたが、そんな言葉さえも愛しい。
遠くから仲間達の声が響いて耳に届く。
だが今は、自分の腕の中で真っ赤になりながらも幸せそうに笑う桃色の髪の少女を、手放せそうになかった。
END
2009-11-20 06:36